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 WTO加盟は鋳物の輸出を促進するだろう

  世界の鋳物年間総需要量は8,000万トン前後である。各国が生産する鋳物のほとんどは自国用であるが、
1,000万〜2,000万トンの鋳物が各国の間を流通している。この流通関係は双方向のものであり、先国は途上
国から低付加価値の単純な鋳物を大量に仕入れ、高付加価値で複雑な鋳物を輸出している。たとえばドイツ
の97年のアルミ品輸出は7.3万トン、輸入は22万トンだった。

中国は鋳造大国ではあるが鋳造強国とはいえない。ここ20年あまりの努力の結果、輸出鋳物は100万トンを
超え総生産量の8.5%を占るようになったが、輸出鋳物の種類と数量はまだ満足のいくものではなく、先進国
の輸出比率20%と比べてもまだまだ低い。また他の途上国同様、エンジン・シリンダーボディーのような複雑
な鋳物をまだ輸入している。

WTOに加盟すれば、中国の鋳造製品は今以上に世界的な循環に組み込まれるようになり、これによって中
国の鋳物輸出は促進されるだろう。

なぜならば:

(1)鋳造は労働集約型製品であり、アメリカの労働力が1人1時間あたり11.83ドル、ドイツが26マルクである
のと比べて、中国の労働力はたいへん安価である。

(2)鋳造は、環境保全と労働者にとってきびしい産業であり、先進国では労働者が集まらず、技術者でさえ
かなり足りない状況になっている(たとえばドイツでは鋳造エンジニアは6,500人不足しているのに440万トン
あまりの鋳物の生産を要する)。そのため途上国から鋳物を購入しようとしている。

(3)中国は原材料が豊富であり、原材料価格も国際価格よりかなり低い。ドイツの銑鉄価格は465マルク/ト
ン、鋳造用コークスは400マルク/トン、スチールスクラップは250マルク/トンと、銑鉄とコークスは中国国内
価格のほぼ倍である。

(4)長年の輸出経験があり、先進国の鋳物の基準と品質要求を理解している。一部の工場は設備もよくな
り、遠心力ダクタイル鋳鉄管、ダクタイル鋳鉄管、旋盤機体、繊維機械パネル、トランスミッション、ステンレス
バルブなど複雑な鋳物の輸出も可能になっている。

(5)大量の合弁企業が操業しており、先進の管理方法をよく理解した鋳鉄労働者がいる。

(6)WTO加盟後は、最恵国待遇を受けられるようになり、一部先進国の鋳物関税の優遇が受けられるように
なるため中国の輸出に有利となる。WTO加盟によって、技術力と管理水準が低い小規模企業の大部分は倒
産、破産するだろうが、それ以上に中国の鋳造業にとっては大きなチャンスとなる。

そのチャンスをつかむには次の点に留意する必要がある。まず中国の鋳物の品質を向上させること。先進の
設備と検査測定機器を使うことが品質保障の前提となる。また自社の付加価値を高める一方で国際的な仕
入れの趨勢にあわせる−これからの工場はすべてOEM(相手先商標製品)製造方式を採用するようになるだ
ろう。またWTOのアンチダンピング法にも留意する。自己の利益を保護し、値下げ合戦は慎む。原価割れで売
ることは更に認められない。正常な輸出を行ない、法廷での訴訟にも対抗できる準備をしておく。そして、先進
の技術と設備の導入に努め、レベルアップに努める。輸出を拡大するとともに複雑な鋳物の輸入を食い止め
る。関税率が8.07%に下がると輸入鋳物の競争力が増すことにも注意が必要だ。

(2000年11月15日「機電日報」)


 

               

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