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2001.10.17 

中国との国際分業を再考する(その1) −中国の脅威と機会− 

コメンテータ      取締役 土屋勉男 

変動しつつある日中国際分業関係
中国との国際分業のあり方に変化の兆しがあらわれている。従来は賃金が日本の10分の1から20分の1という点に着目して、製品又は部品の組立工場としての現地生産化に力点が置かれて来た。
ところが最近の中国現地法人は、組立工程から一歩進み、現地の安い部材費を活用する方向に、分業が高度化、多様化しつつある。
その要因として、90年代以降日本を初めとする先進国からの直接投資による設備、技術ノウハウの移転が進み、中国企業の技術力が一段と向上したことが大きい。
   
高機能の素形材製品でも中国の影
先日仕事の関連で、日本の舶用エンジン鋳物工場を見学する機会があった。舶用エンジン鋳物は、素形材の中で技術集約製品の1つであり、海外現地生産化が進んでも日本国内に最後まで残ると見られて来た。ところが同工場の中には、既に中国産の大型の鋳物が試験的に輸入されており、品質はまあまあ、コストは30%から50%低いとのこと。高難度な薄肉のエンジン鋳物は別にすれば、中国からの輸入鋳物に取って代わられる時期はそれほど先のことではない。
技術ノウハウの塊であり、海外からの調達はここ当分考えられないと見られていた大型のエンジン用鋳物でも“中国産”が活用され始めているのが現実である。
エレクトロニクス系の工場では、機械系以上であり、むしろ製品組立だけでなく、部材の現地調達をいかに効果的に進めるかが、高収益工場を作るための成功要因になりつつある。
   
新たなグローバル・ビジネス・モデルの開発を
日本企業は、1985年以降ASEAN(タイ、マレーシア、フィリピンなど)や韓国、台湾との間で、開発、部材供給は日本、製品組立は現地という“垂直分業型”のビジネス・モデルを構築して来たが、それでは“中国の優位”を十分取り込めるとは言えない。
製品組立だけでなく、部材の調達を含めたフルセット型の展開こそが中国の競争優位を最大限に活用する道となりつつある。もしそうであると、日本企業は、国内事業のあらゆる工程を一貫して現地化する必要があり、“産業の空洞化”がいよいよ現実の問題となる。中国の台頭、中国の「世界工場化」はここ2、3年急速に進みつつあるが、日本企業が得意とする垂直分業型のビジネス・モデルからの転換でもある。
目指すべき方向は、低コスト、高品質の物作り国“中国”をグローバル・ビジネス・モデルの中にいかに活用するかであり、日中の国際分業をリードする開発力、技術力の強化に向けての戦略が問われている。

MRI INTERNET CLUBより転載

 

               

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